ECHONET Lite

ECHONET Lite（エコーネットライト）とは

ECHONET Liteは、エコーネットコンソーシアムによって策定された、スマートホーム向けの通信プロトコルです。このプロトコルは、国際標準規格（ISO/IEC）としても認められており、家庭内の様々な機器を相互に接続し、制御することを目的としています。

2011年12月には、経済産業省によって日本国内のHEMS（Home Energy Management System）標準プロトコルとして認定され、さらに2012年2月にはスマートメーターとHEMSを繋ぐ標準プロトコルにも認定されました。

ECHONET Liteの概要

ECHONET Liteは、パナソニック、東芝、三菱電機、日立などのエコーネットコンソーシアム会員企業によって開発されました。OSI参照モデルをベースにしたこの通信プロトコルは、従来のECHONET規格の課題であった実装の複雑さを解消し、より軽量で柔軟なシステム構築を可能にしました。

従来のECHONET規格では、物理層やMAC層も規格化されていましたが、ECHONET Liteではこれらの層を規格対象外とし、グローバルスタンダードな通信方式への対応を容易にしました。これにより、異なるメーカーの機器間でも相互接続が可能となり、スマートホームシステムの普及を促進しています。

ECHONET Liteは、創エネ、蓄エネ、省エネをコンセプトに、スマートホーム向けのシステムを構築する上で、ベンダ間の相互接続を可能とすることを目的としています。オブジェクト指向の設計を採用しており、エアコン、照明、給湯器、太陽光発電システム、蓄電池、スマートメーター、各種センサーなどの機器をオブジェクトとして扱い、GET（状態取得）、SET（設定・操作）、ANNOUNCE（通知）などのアクセスルールを用いて、これらの機器を制御したり、状態を取得することができます。

ECHONET Lite搭載機器の普及

2013年度から2022年度のデータによると、スマートメーターを除くECHONET Lite機器の累計出荷台数は5,922万台に達しています。また、ECHONET Liteを搭載したスマートメーターの累計設置台数は約7,957万台であり、これらの合計から、2022年度までのECHONET Lite搭載機器の累計出荷台数は1億3,879万台を超えることがわかります。

ECHONET Lite通信プロトコルの詳細

ECHONET Lite通信プロトコルは、ECHONET Liteフレーム（またはECHONET Lite電文）と呼ばれるメッセージをやり取りする通信手順です。個別通信や一斉同報通信を用いて、ECHONET Liteフレームを送受信します。

ECHONET Liteフレームは、ヘッダー（EHD）、トランザクションID（TID）、送信元オブジェクト（SEOJ）、送信先オブジェクト（DEOJ）、サービス（ESV）、アクセス先プロパティ（EPC）、アクセス先プロパティ値（EDT）などで構成されています。

サービス（ESV）には、GET（状態取得）、SET（設定・操作）、ANNOUNCE（通知）などが含まれ、オブジェクトへのアクセス方法を決定します。GETやSETは、コントローラからポーリングして状態を取得したり、制御操作を行うシステムに用いられます。ANNOUNCE（通知）は、主にセンサー機器からの自律的な発報や、ECHONET Liteノードのプラグアンドプレイの実現に利用されます。

ECHONET Lite通信ミドルウェア

ECHONET Lite通信ミドルウェアは、ECHONET Lite通信プロトコルを処理するためのソフトウェアであり、ECHONET通信処理部、ECHONET機器オブジェクト、プロファイルオブジェクトなどで構成されます。OSI参照モデルでは第5層から第7層に相当し、下位層はエコーネットコンソーシアムでは特に規定していません。

ネットワーク層にはIPv4やIPv6が使用可能であり、MAC層・物理層にはイーサネット、Bluetooth、IEEE802.11b/g/n、IEEE802.15.4などを利用できます。UDP/IPを使用する場合は、ポート番号3610番が宛先ポート番号として規定されています。また、IPv4で一斉同報通信を行う場合は、ECHONET専用のマルチキャストアドレス（224.0.23.0）を使用し、IPv6の場合は全ノードマルチキャストアドレス（FF02::1）を使用します。アプリケーションプログラミングインターフェース（API）はエコーネットコンソーシアムでは特に規定していません。

ECHONET機器オブジェクト

ECHONET機器オブジェクトは、エアコン、照明、給湯器、太陽光発電システム、蓄電池、スマートメーター、各種センサーなどの機器を抽象化し、共通のアクセスインタフェースで制御できるようにしたものです。各機器には、プロパティと呼ばれる属性や操作の定義があります。これらのプロパティやプロパティの値は、エコーネットコンソーシアムによってバイナリで定義されており、HBS（ホームバスシステム）という規格がベースになっています。各機器オブジェクトは、スーパークラスオブジェクトとクラスグループオブジェクトを継承し、個々の機器は識別番号プロパティによって識別されます。現在、80種類以上の機器がECHONET Liteの機器オブジェクトとして定義されています。

ノードプロファイルオブジェクト

プラグアンドプレイを実現するために、ノードプロファイルオブジェクトと呼ばれる仕組みが定義されています。これにより、機器をネットワークに接続するだけで自動的に認識され、利用できるようになります。

ECHONET Liteの実装と機器の種類

ECHONET Liteは、OpenECHOやTOPPERS/ECNLなどのオープンソースプロジェクトで実装が進められています。また、ECHONET Lite規格書では、「フルECHONET Lite機器」「ECHONET Liteレディ機器」「ECHONET Liteミドルウェアアダプタ」などが規定されており、送信専用機器も新たにカテゴリに追加されました。

ECHONET Liteレディ機器は、ECHONET Lite通信ミドルウェアを機器本体には持たないものの、ECHONET Lite機器として認定されています。これらの機器は、ECHONET Liteミドルウェアアダプタを追加することで、ECHONET Lite機器として動作可能です。エコーネットコンソーシアムによると、ECHONETレディ機器は既に1,400万台以上が出荷されています。

ECHONET Liteのシステムアーキテクチャ

ECHONET Lite規格書は主に通信ミドルウェアを規定しており、外部システムとの接続やアプリケーション配信については定義していません。これにより、クライアントサーバモデルの集中制御型、自律分散制御型、APSやクラウド型など、多様なシステムアーキテクチャに対応できます。

ECHONET Liteの開発会社と認証

ECHONET Liteの開発に携わり、機器認証を取得している企業には、株式会社ユビキタス、株式会社ACCESS、東芝ライテック株式会社、株式会社日新システムズ、東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社、サーコム・ジャパン株式会社、シンセー電機株式会社、パナソニック株式会社、大和ハウス工業株式会社、富士通株式会社、シャープ株式会社、図研エルミック株式会社などがあります。神奈川工科大学には、HEMS認証支援センターが設立され、ECHONET Lite機器の開発をサポートしています。

ECHONET Liteの歴史

2011年3月9日、ECHONET Lite Ver.1.00 Draft版がコンソーシアム会員内で公開され、同年6月30日にはVer.1.00版が一般公開されました。その後、2012年3月5日にはVer.1.01版が公開されています。